ひとみ健康辞典
網膜はく離
失明の危険をはらむ 網膜はく離
網膜に裂け目ができ眼底からはがれる病気。老化がおもな原因です
眼球内で、カメラでいうフィルムの役割を果たしているのが網膜です。網膜に異常が起こると、視野や視力といった視機能にすぐに影響を及ぼします。
網膜はく離とは、網膜が眼底からはがれ、視力の低下や失明を引き起こす恐い病気です。
網膜はく離には、大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつは網膜に裂け目や孔があるためにはがれるタイプ。もうひとつは網膜が内側から引っ張られてはがれるタイプです。前者は近視や加齢に伴い、後者は糖尿病によるものが代表的です。
網膜は10層からなり、一番外側が脈絡網と接している網膜色素上皮といい、他の9層をまとめて神経網膜といいます。
この網膜の内側はゼリー状の硝子体で占められています。硝子体は老化すると液体化して眼球の前方へと縮んでしまう性質があり、この変化が始まるとき、硝子体と一緒に癒着した神経網膜が少しずつ引っ張られ、網膜色素上皮からはがされてしまうことがあります。網膜の裂け目を網膜裂孔といいます。引っ張られた網膜がはがれると、硝子体の水分が裂孔を介して網膜のうしろに入り込んで、はがれをどんどん押し広げるようになり、網膜剥離が進行します(前者のタイプ)。
飛蚊症、光視症、視野障害が
網膜はく離にみられる3大自覚症状です
網膜はく離は痛みを感じません。最初は目の前に小さなゴミのようなものが飛んでいるように見える飛蚊症がよく起こります。飛蚊症そのものは網膜はく離でなくても老化現象でも起きますが、さらに目の前に黒い小さいものが急に見えるようになり、それまであった黒い点が増えてきたり、暗いところや目を閉じた状態で視野の隅がピカピカ光る感じがすることもあります(光視症)。網膜はく離ではこうした自覚症状が突然現れることもあります。
この状態を放置していると、網膜の裂け目が大きくなっていき、網膜はく離になると、はがれた網膜に相当して視野が欠けていきます。脳の視覚領域の構造から、網膜の上のほうがはがれると視野の下のほうが欠けていき、耳側の網膜がはがれると鼻側の視野が欠けていきます。はく離が進んで目の中央部に及べば視力も悪くなります。放置すれば重い視力障害や失明につながります。
初期症状を見逃さないことが最善の予防策。
異常を感じたら眼底検査を
加齢による網膜はく離の起こりやすい年代は40~60歳。若くても強度の近視がある人は網膜はく離が起こりやすい傾向があります。網膜はく離は小さくても、通常、瞳を開いて行う眼底検査で発見することができます。自覚症状が続くようであれば必ず眼底検査を受けましょう。
白い壁を見るなどして飛蚊症の症状が出ていないか、左右の見え方に異常はないかなど自分でチェックし、初期症状を見逃さないことが大切です。
こんな人は網膜はく離に気をつけたい!
1. 40歳以上の中高年
網膜はく離は硝子体の老化も原因で、40~60歳の働き盛りの人に多くみられます。40歳を過ぎたら、身体のチェックと合わせ、定期的に眼底検査を受けて目の健康管理にも気を配りましょう。
2. 強度の近視
近視の度合いが強い人は、眼球も大きくなっていて網膜も引き伸ばされて裂け目を作りやすい状態になっています。眼球の打撲などを受けないように注意することが大切です。
3. 白内障の手術をうけたことがある人
白内障の手術では、濁った水晶体の代わりに眼内レンズをはめ込みます。しかし、年齢による硝子体の変化もあるので、眼底は定期的にチェックするようにしましょう。
4. 重度のアトピー性皮膚炎の人
アトピー性皮膚炎の方に網膜はく離が増えています。因果関係ははっきりしていませんが、アトピー患者の中には、かゆさのため目を叩いてしまい、外傷性の網膜はく離を起こす危険もあります。